研究課題
二次有機エアロゾルの分子レベルの組成を明らかにする目的で、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)法によるオフライン分析を行った。芳香族炭化水素(1.5~4ppm)-窒素酸化物(~1ppm)-亜硝酸メチル(~1ppm)-空気-光照射系の室内チャンバー実験によって二次有機エアロゾルを生成した。炭化水素として、ベンゼンと1,3,5-トリメチルベンゼン(TMB)を用いた。生成したエアロゾルを飛行時間型エアロゾル質量分析計(AMS)で実時間分析するとともに、テフロンフィルター上に捕集してLC/MS法によるオフライン分析に用いた。LC/MS分析では、負イオン大気圧化学イオン化法によって試料をイオン化した。ベンゼンの反応では質量数125、141および157に、またTMBの反応では質量数183、199、215および231に、生成物のイオンによる強い信号が検出された。検出されたイオンが擬分子イオンであると仮定して、ベンゼンの反応で見つかった生成物をC6H60x(x=3~5)、TMBの反応で見つかった生成物をC9H120x(x=4~7)と仮同定した。結果は、反応物の炭素数と水素数を保存しつつ高度に酸化した分子が生成することを示していた。オフラインの分析結果を見る限り、両者の生成物は基本的に良く似ていた。一方で、AMSによる測定によれば、ベンゼンからのエアロゾルのO/C比(0.70~0.88)は、TMBの場合(0.47~0.57)よりも高かった。得られたエアロゾルのO/C比に反応物の炭素数を乗じると、ベンゼンの場合には分子一個当たり平均して4.2~5.1個の酸素原子が付加していることが分った、これは、TMBの場合(4.2~5.3個)とほとんど同じであった。昨年のAMSの測定に基づく経験的な解析から、ベンゼンからのエアロゾルの方がTMBよりも酸化が進んでいると解釈した。しかし、本年度の組成分析や元素分析の結果と合わせて考えると、ベンゼンとTMBとで酸化の度合いは同程度であり、エアロゾルのO/C比の違いは反応物一分子あたりの炭素数の違いで説明されると考えられる。
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