研究概要 |
日本の森林を構成する樹木は、オゾン(O_3)と土壌への窒素沈着の複合影響を受けている可能性がある。土壌に過剰な窒素が供給されると、硝化作用が促進され、土壌酸性化を引き起こす。土壌酸性化を改善することを目的として土壌への石灰添加が行われているが、石灰添加の樹木影響において一定の見解が得られていない。そこで本研究では、O_3と土壌への窒素負荷の複合的な影響を受けたブナ苗に対する土壌への石灰添加の影響を明らかにすることを目的とした。2年生のブナ苗を褐色森林土を詰めたポットに移植し、O_3暴露チャンバー内で2010年6月8日~2011年10月31日まで育成した。ガス処理区として、浄化空気区とチャンバー内のO_3濃度を野外のそれの1.0倍または1.5倍に制御したO_3区を設けた。窒素処理として、土壌への年間積算負荷量が0,20,50,100kg ha^<-1>year^<-1>となるように、NH_4NO_3溶液を土壌表面から添加した。3段階のガス処理と4段階の窒素処理をファクトリアルに組み合わせて、合計12処理区を設定した。2011年5月7日に、100kg ha^<-1>year^<-1>で1年間にわたって土壌への窒素負荷を行ったブナ苗の半数の個体の育成土壌に苦土石灰(CaCO_3:MgCO_3=1:1)を4,887kg ha^<-1>で添加した。2011年9月における土壌溶液のpHに、土壌への石灰添加による有意な上昇が認められた。2011年7月におけるブナ苗の葉のRubisco濃度は、石灰添加によって有意に増加した。しかしながら、2011年7月におけるブナ苗の葉の純光合成速度と個体乾物成長は、土壌への石灰添加によって有意に低下した。これらの結果より、O_3と土壌への窒素負荷の複合的影響を受けたブナ苗の純光合成速度や成長の低下は、土壌への石灰添加によって完全には回復しないことが明らかになった。
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