研究概要 |
本研究課題では,複雑な地形・地質と断続的な降雨のもとで,汚染物質がどのように拡散・分散するのかを定量的に把握するために,どの要因がどのような影響を与えるかをまず明らかにすることを目的とし,そのための手段として,3次元斜面における水溶性物質の輸送挙動を解析するシミュレーションコードを開発するとともに,模型実験による数理モデルの検証と,数値実験による詳細な検討を計画している. 平成21年度においては,まず,これまでに作成してきた浸透流解析および移流分散解析手法を発展させ,3次元斜面における物質輸送に関する基礎的な検討を実施した.その結果,下流への汚染物質の到達状況は,地盤の平均的な透水性,および汚染源位置の違いに対して敏感に反応することを明らかにし,その成果は学術雑誌にて公表した.またフィールドスケールにおける移流分散解析の際に問題となる不均一浸透場における巨視的分散長の性質について検討し,比較的簡易なモデルによって表現できる可能性を明らかにした.この成果は平成22年度中の学会発表を予定している. これに加えて,室内模型実験を実施し,降雨浸透による鉛直不飽和浸透と,斜面に沿う飽和浸透流の混在する場における物質輸送現象について検討を行った.これにより,斜面内の流況に関しては数理モデルにより良好に再現可能であることを明らかにした.しかしながら,物質輸送状況に関しては,実験結果と解析結果の乖離が大きく,この点に関しては,実験装置に改良を加えた上で,平成22年度も引続き実験を継続する.
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