研究概要 |
本研究課題では,複雑な地形・地質と断続的な降雨のもとで,汚染物質がどのように拡散・分散するのかを定量的に把握するために,どの要因がどのような影響を与えるかをまず明らかにすることを目的とし,そのための手段として,3次元斜面における水溶性物質の輸送挙動を解析するシミュレーションコードを開発するとともに,模型実験による数理モデルの検証と,数値実験による詳細な検討を計画している. 平成23年度においては,自然斜面を模した数値地形モデルを用いて,複雑な3次元斜面内の降雨浸透過程および物質輸送過程について,降雨パターン,斜面条件や汚染源等の影響について数値シミュレーションにより検討した.つまりシミュレーションを「数値実験」と位置づけ,実測が困難な実物大斜面における降雨浸透挙動と汚染物質の挙動について検討した.これにより,斜面の透水性,降雨強度,地盤の層厚,汚染源と取水井戸の配置等が,浸出水濃度に与える影響について明らかにした. これに加えて,フィールドスケールにおける移流分散解析の際に問題となる不均一浸透場における巨視的分散長の性質について検討した.前年度までに,1次元的な流れ場における平均的な巨視的分散長に関して,2次元および3次元モデル,また異方性不均一場モデルを用いた検討を行ってきたが,平成23年度は横方向分散が生じる場,および不飽和鉛直浸透場を検討対象とした.この結果,何れの場合でも縦方向分散のみが生じる場合と同様に,比較的簡易な数式と無次元パラメータによって定量的に表現可能であることを明らかにしたが,得られた関数形はそれぞれ異なることを示した.これらの成果は学術雑誌に投稿,および平成23年度中の学会発表を予定している.
|