本年民は、韓国における総量規制の運用実の調査と、日本における生態系サービス支払いの現状について研究を行った。韓国では、かねてより点汚染源に対する排出規制と水源地域での土地利用規制を組み合わせた水質保全政策がとられてきたが、これらの政策では小規模な点源や非点源からの汚染をコントロールできていないことが問題視されており、その点を補完するものとして自治体を対象とする総量規制が新たに導入された。本年度は新たに導入された総量規制について研究を行い、適切な排出クレジットの初期配分を行うことが総量規制制度の導入のために決定的に重要な条件であることを明らかにした。また、逆説的ではあるが、規制対象の自治体が制度の構造を十分に理解しておらず制度に対する関心も低かったために、比較的低い制度運用コストで制度の導入が可能になったことを明らかにした。今後は自治体の制度に対する理解も深まると同時に、排出クレジットのマーケットが整備されてその価値が高まることが予想されており、それによって排出クレジットの初期配分を合意することは著しく困難になり、制度の運用が困難になるであろうということを予測した。さらに、李明博政権によって進められている大規模な河川サルリギ(再生)事業がこの状況に拍車をかけるであろうということも予測された。一方、日本における生態系サービス支払の現状について検討し、諸外国の事例と日本の事例ではどのような差異がみられるのかを明らかにした。
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