持続可能な開発のための教育(ESD)推進のための地域の拠点(RCE)の成立、発展プロセスを調査し、その駆動力を解明するため、仙台広域圏(特に仙台市、気仙沼市)及び岡山でのヒアリング調査(仙台:H21年7月、12月、岡山H22年1月、3月)を実施するとともに、それぞれの地域での関係者による会議を開催し、地域のステークホルダーが感じている駆動力が何であったかを分析した。その結果、これら2つのRCEでは、(1)ESD推進に向けた基盤となる活動の萌芽がRCEの成立前に既に見られたこと、(2)RCEの成立段階では必ずしも関係者間でRCEの意義に関する共通認識が醸成されていなかったこと、(3)何回かのステージを経て、数年間をかけて徐々に国連大学が目指したRCEに向けた進展が図られつつあることが明らかにされた。(2)に示されたように、確固とした理念に基づいてRCEが成立していない点は、欧米型のRCE成立プロセスとは大きく異なる。韓国のTonyong RCE、中国のAnji RCEのように、アジアの多くのRCEは、日本と同様な成立・発展プロセスであることも明らかにされた。なお、仙台広域圏RCEでは、当初から大学が主導的な役割を果たしたのに対し、岡山RCEでは当初は自治体(岡山市)が主導的な役割を果たし、大学は後年関与を深めた点に特徴がある。 ESDが学力向上に及ぼす影響の検討に関しては、主として文献調査により、これまで行われてきた研究の整理をした。また、仙台広域圏RCEの気仙沼市の小中学校関係者による学校教育とESD、学力に関する予備調査、岡山RCEの岡山市京山公民館等を対象とする予備的なヒアリング等を実施し、ESDと学力向上に関する基礎的な情報を得た。
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