研究概要 |
かつて日本各地に存在していた海岸砂丘は,飛砂防備保安林の整備と農地化,埋め立て,開発などにより改変されてきた。本研究では,第二次大戦後に改変され,半自然状態にあるかつての海岸砂丘地を対象に海浜生態系の現状を明らかにする。各地で高まりつつある海岸砂丘地の生物多様性,生態系サービス機能の保全を編み込みながら,利用形態の変更による向上可能性の予測を行い,海浜植生の保全と人間の利用が両立可能な管理方法について検討をおこなう。 22年度はa.海岸砂丘地の歴史的変遷と,b.改変された砂丘地における海浜植生の現状の解明について,鳥取砂丘(広義)にて集中的な研究を行った。 現在も砂丘地として観光に利用され,植生管理が行われている部分と,最近60年間植生管理が行われていない場所の植生比較をおこない,両者の種構成はよく似ているが,植生構造は大きく異なっていることを明らかにした。これは,海岸砂丘が残されている場所でも,人間活動の影響により海浜植生が大きく影響を受けることを示しており,海浜植生のもつ生態系サービス機能を考察する上で非常に興味深い知見である。 本研究をもとに,日本生態学会第58回大会(札幌,H23.3)において公募されたシンポジウムに企画者として申請を行った。企画は採択され,海浜植生に知見の深い研究者を組織してシンポジウムを編成し,自身もこれまでの研究成果について発表を行った(H23.3.9)。
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