本研究は海岸林の造成と後背地の農地化によって改変され,半自然状態にあるかつての海岸砂丘地を対象に,海岸砂丘の現状を明らかにすることに取り組んできた。24年度は研究最終年度であり,最終的なとりまとめを行うとともに,研究成果の発表につとめた。 海岸砂丘地の土地利用に関する歴史的変遷について,自然海岸がよく残る山陰のような地域でも,海岸背後の砂丘地は人為改変により著しく縮小していた。海岸砂丘本来の生態系が破壊されてきた状況について本研究により明らかにした。この成果について学術雑誌に発表すべく,日本生態学会誌の特集企画として数名の研究者とともにその実現にとりくんだ。特集の幹事として自身の論文を含む計6本の原稿を集め,投稿前の原稿修正までこぎつけ,24年度末までに,投稿の一歩手前までたどり着いた。早期の投稿を目指す。 人間による利用・改変が行われた場所における海浜植生の現状解明については,残された海浜幅の異なる砂丘地での構造解明研究をすすめ,人為改変との関係についてその一端を明らかにした。この成果について学会発表を行った。成果の一部は論文化された。 海岸砂丘がもつ生態系サービスの類型化については,主に地域社会に対して,その生態系の特異性と,精神的価値,防災的な価値について広報することに努力した。講演の機会や書籍,報告書等を通じて,研究成果の還元につとめるとともに,海浜砂丘の生態的価値について議論した。 本研究課題を深める中で,海浜砂丘の機能について東日本大震災による津波災害の影響を取り込んだ検討が不可欠との結論に至り,これについて,次の研究課題として集中的に取り組むことにした。
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