研究課題
環境税がイノベーション活動に対して与えた影響に関する実証分析を引き続き行った。まず環境税の導入が研究開発活動に関して 「シグナリング効果」 を持つか否かを定量的に検証するために、スウェーデンの産業別時系列データを用いてStructural Time Series Model (STSM)による推計を行なった。環境税のシグナリング効果とは、税の賦課による価格の上昇は、「税の賦課」ということが何らかのシグナルを与えるために、単なる製品価格の上昇以上のインセンティヴ効果等を与えるというものである。具体的には、産業毎の研究開発支出額がエネルギー価格と付加価値等によって決定されるという関数を推計するが、その際STSMを用いると、通常の回帰分析の定数項に相当する項が確率的に変化するように推計することが可能になる。そのtime-varyingな項は、エネルギー価格の変化等が研究開発活動に与えた影響を取り除いた諸々の影響を含んでいる。もしシグナリング効果が存在するとすれば、炭素税導入後にこの項が拡大傾向を示すと考えられる。推計の結果、いくつかの産業において、この項が炭素税導入以降に拡大傾向を示しており、炭素税導入がシグナリング効果をもつ可能性が示唆された。また、前年度に行なったスウェーデンの地域熱供給業者等への現地聞き取り調査から得られた情報をもとにして、電子メールでいくつかの事業者に炭素税等が研究開発活動に対して与えた影響に関して質問票を送付した。これに関しては、漸進的なイノベーションはあったものの革新的なイノベーションを引き起こしたという事実は確認できなかった。日本の事例についても検討を行っている。公害健康被害補償法によりSO2排出に応じて課された賦課金が技術開発に与えた影響について特許データを用いて分析したが、技術普及は促したと考えられるものの技術開発を促進したという結果は現在までのところ得られていない。引き続き、特許データの吟味を行っているところである。
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DECD, COM/ENV/EPOC/CTPA(2009)38/FINAL
ページ: 1-52
CUC View & Vision
巻: No.30 ページ: 4-8