1、上・下流地域の環境評価のコンフリクト分析と合意の可能性に関する研究 鴨川流域と高野川流域で実施されたアンケート結果から「川の利用」に関する回答と「川に対する印象」に関する回答を用いて、数量化理論2類により生活者の印象が利用に及ぼす影響を分析した。ついで、印象に影響を及ぼす川の物理的要素や上下流域生活者の川に対する印象の相違についてクラメールの関連係数、クラスター分析を用いて分析を行った。さらに、順位相関係数を用いて、コンフリクトの発生可能性について分析を行い、整備方針を検討した。以上より、多基準評価とコンフリクト分析を合わせることに依り、合意の可能性を示すという重要な結果を導いた。この多基準分析システムは今後のコンフリクトマネジメントへの道筋を明らかにしたという点で意義ある研究となった。 2、参加型多基準分析システムとしての水辺環境マネジメントの構築に関する研究 適応的水辺整備計画方法論は、問題の明確化、調査、分析、計画代替案の設計、評価、コンフリクトマネジメントで示される一連のプロセスである。本研究では、このプロセスに沿って、アンケート調査や多基準分析を行ってきた。特に上・下流地域での社会調査結果と費用・便益分析の批判的検討から参加型多基準分析の可能性を明らかにした。具体的には、社会調査結果より地域別の関心を明確にし、持続可能性だけでなく、生存可能性をも考慮した地域別水辺環境マネジメントの必要性を示した。このことは、持続可能性を論ずる場合には、地域全体としての視点だけでなく、地域内の違いにも焦点を当て、特に地域全体としての持続可能性が維持される中で、生存可能性が危うい地域の存在を考慮に入れた水辺環境マネジメントの必要性を示したという点で意義ある研究となった。
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