放射線による発癌リスクは被曝時の年令によって大きく変化することがヒトとマウスで分かっているが、その原因についてはまだ理解されていない。そこで本研究では癌の有力な原因のひとつであることが分かっている突然変異に注目し、被曝時年令依存性が突然変異誘発率の違いで説明できないかどうかをマウスを用いて解明しようとしている。本年度は発癌感受性の高い生後2日令及び4日令のマウスでの放射線による突然変異誘発効果を調べ、adult(2ヶ月令)での値と比較してみた。その結果、肝臓では約1/2、脾臓と脳では約1/4と低い値を示した。これらの変異体についてDNA塩基配列を解析すると放射線に特徴的な欠失型変異が多くみられた。2日令と4日令の差はみられなかった。さらにこの被曝時期による違いの原因として放射線の突然変異誘発に直接関わっていると思われる非相同末端結合修復(NHEJ)と相同組換え修復(HRR)の役割を明らかにするため、Ku70遺伝子欠損マウスとRad54遺伝子欠損マウスを突然変異検出用マウスと交配した。NHEJのホモマウスは生存率が低くまだ充分な匹数は得られていないが、HRRの欠損マウスについては数がそろい、新生仔期での突然変異誘発率を測定し始めた所である。今後これらのマウスでの放射線による突然変異誘発率の年令依存性や癌誘発率などを調べてゆきたい。今年度の結果は予測していたものとは反対の結果であるが、今後この現象をより明確にすることにより放射線発がんの被曝年令依存性の要因として突然変異が重要かどうかを明らかにしてゆきたい。
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