生体がもつ発がんの防御システムであるDNA損傷応答反応においても、ユビキチン化反応やそれを介したシグナル伝達の重要性が次々と明らかにされている。本研究で着目するCul4/DDB1ユビキチッリガーゼは、近年解析が進んできたCul4を含むRING型ユビキチンリガーゼである。本研究では、ユビキチンリガーゼのアダプターとして機能するDDB1のコンディショナルノックアウト細胞を用いて、DNA傷害が生じた時のCul4/DDB1ユビキチンリガーゼの基質分子やその破綻による影響を解析し、DNA損傷応答における機能を明らかにすることを目的とする。 本年度は、DT40細胞を用いて作製したコンディショナルノックアウト細胞を用いて、DDB1を欠損した時の各種DNA傷害剤に対する感受性や応答性について検討した。感受性は色素排除法により解析を行ったが、紫外線、X線、カンプトデシン、エトポシド、シスプラチン、過酸化水素、ヒドロキシウレアのいずれにおいてもわずかな抵抗性を示し、この指標では信頼のおける結果が得られないと判断した。そこで細胞周期分布の変化に注目して解析を行ったところ、カンプトデシンやエトポシドを処理した時に、野生型のDT40細胞やDDB1存在下では著しいG_2/M期への蓄積がみられたが、DDB1を欠損させた場合にはS期の初期で遅延または停止していることがわかった。この結果は、これらの薬剤に対する応答反応への関与を示唆しており、来年度以降その機能の実態を明らかにしていきたい。しかし、本年度の実験系ではDDB1が消失するまでの時間が長く、間接的な効果を見ている可能性が否定できないため、短時間で発現調節の可能な分解誘導による発現抑制系を導入し、より詳細な解析を進めていく予定である。
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