本年度は、DNA損傷応答におけるCul4/DDB1ユビキチンリガーゼの機能を明らかにするために、1)短時間で発現調節の可能な分解誘導によるDDB1の発現抑制系の導入、2)ヒストンH2Aのバリアントのリン酸化体であるγH2AXのユビキチン化反応に及ぼす影響の検討、3)Cul4との相互作用を消失したDDB1変異体の作成とその表現型の解析を行った。 以上の研究により得られた成果は以下のように総括できる。1)分解タグを付加したDDB1を一過性に発現させ、DDB1の発現が極めて速やかに抑制されることを確認し、安定発現細胞の樹立を進めている。2)ヒストンH2Aのバリアントのリン酸化体であるγH2AXが、紫外線によりユビキチン化されることを新たに見いだし、その反応にDDB1が関与を示唆する結果を得た。3)Cul4との相互作用のみを欠失したDDB1変異体が、DDB1を完全に欠損した場合と全く同様な表現型を示したことから、DDB1の生存に必須な機能がユビキチンリガーゼとしての機能によることがわかった。 以上の成果の中で2)の結果は新規のものであり、現在までに知られているCul4/DDB1ユビキチンリガーゼが関与するヒストンの修飾反応との意義の違いを考えると非常に興味深い。また、3)の解析により細胞の生存におけるCul4/DDB1ユビキチンリガーゼの機能の重要性が明らかとなった。 来年度は、現在進めている分解タグを持つDDB1安定発現細胞の樹立を早急に終え、Cul4/DDB1ユビキチンリガーゼの新規の機能について解析をさらに進める予定である。また、本年度の研究により示唆されたγH2AXのユビキチン化反応についても、上記の細胞株等を用いてより詳細に検討する予定である。
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