本年度は、DNA損傷応答におけるCul4/DDB1ユビキチンリガーゼの機能を明らかにするために、1)短時間で発現抑制の可能な分解タグを付加したDDB1安定発現細胞の樹立、2)Cul4との相互作用を消失したDDB1変異体発現ヒト細胞の樹立、3)ユビキチンリガーゼの活性中心のflexibilityの生物学的意義について検討を行った。 以上の研究により得られた成果は以下のように総括できる。1)分解タグを付加したDDB1安定発現細胞の樹立を試み、DT40細胞を用いて内在と同程度の発現を持つ細胞株を得た。2)Cul4との相互作用のみを欠失したDDB1変異体を安定に発現するヒト細胞株を得た。3)立体構造的にユビキチンリガーゼの活性中心の可動性を失うと予想されるDDB1変異体をDT40細胞に導入したところ、DDB1を完全に欠損した場合と全く同様な表現型を示したことから、ユビキチンリガーゼの機能においてこのflexibilityが極めて重要であることが示唆された。 以上の成果の中で3)の結果は新規のものであり、Cul4/DDB1ユビキチンリガーゼの活性制御機構を考える上で非常に重要な知見である。また、1)と2)により得られた細胞株は、生存に必須なCul4/DDB1ユビキチンリガーゼの機能を解析する上で、重要なモデルを提供すると考えられる。今後は、現在進めている分解タグ付加DDB1安定発現細胞の性格付けを早急に終え、Cul4/DDB1ユビキチンリガーゼの新規の機能について解析をさらに進める予定である。また、本研究により示唆された活性中心のflexibilityの生物影響についても、別の角度から研究を進めるつもりである。
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