研究概要 |
(1)C.elegansは多細胞生物であるが、体細胞数はほかの生物と比較して少なく、また成虫まで成長すればその後は細胞分裂を停止する。これらの特徴からC.elegansはその生涯で行う細胞分裂の回数は非常に少なく、ゲノム複製に伴う誤対合の影響がほかのモデル生物と比較して小さく、damage responseの解析に有用である。C.elegansはMMRホモログとしてMSH2, MSH6, MLHI, PMS2の4つをもっている。これらの遺伝子が欠損することにより自然突然変異の頻度が増大することが示されており、これらがMMRの経路で何らかの役割を果たしている可能性が高い。今年度はそれぞれのmutantのback-crossを行い、そのmutantのストレス感受性調べと4つの遺伝子昆虫細胞発現株を作成し、タンパク質精製を行った。 (2)APサイト(脱塩基部位)は塩基除去修復経路の過程で生じるだけでなく、自然に起こる脱プリン反応によっても断続的に生じている。DNA複製の障害となるほか、分裂しない細胞でも転写の障害となり、細胞の生存に悪影響を及ぼす。APエンドヌクレアーゼはそのようなAPサイトを認識し、3'末端が適切な形になるようにDNAを切断する。我々はカタユウレイボヤにおけるAPエンドヌクレアゼCiAPEの発現in situで同定した。また、dominant negative法を用いて、CiAP導入ホヤ株の発生阻害を起こす様子を観察できた。 (3)線虫の塩基除去修復欠損株ung, nth, exo-3の二重、三重欠損株を作成し、それらの遺伝子欠損と成長、発生、産卵数、酸化ストレス感受性について調べた。また、Apn-1は細胞核中に存在して、apn-1::GFP導入株と抗体による免疫染色方法で確認できた。Exo-3欠損によって産卵数の減少、そして寿命延長を観察できた。このことは生涯生育数と寿命との影響について線虫でも確認出来た。 (4)線虫Ndx-1は8-oxodGDPを分解する活性を持ち、RNAi阻害線虫は酸化ストレス高感受性を示した内容をJournal Biochemistry雑誌上に公表した。 (5)ホヤNth遺伝子を同定した、そしてN-末端がタンパク質活性に特に重要であることが分かった。
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