前歯ベータ計数率から体内Sr-90量換算計数値の確度の改善などに取り組んだ。そのため、これまでの南ウラル、ロンゲラップ、日本人の測定データから得られた結果を整理し、分かり易い教育資料を作成した。その内容はロシア連邦放射線衛生学研究所およびウラル放射線医学研究所の協力で実施した2000年の南ウラルの放射線衛生学調査を基礎とした。体内ストロンチウム量、骨格と歯の取り込み時期の差異に加え、日本人人骨資料中の放射能値と線量の年代変化のデータを整理した。 本年度はこの資料を使用して、日本人および来日外国人の被験者の前歯の測定を2度、東京都内で行なった。教育資料による説明の他に、ムスリュモボ村から2000年に持ち帰ったSr-90を含むヘラジカの角のベータ線計測の実演で、被験者の理解を促した。このベータ線計測は、札幌医科大学医学部医学科1年生の物理学実験の放射線防護学課題でも利用した。 ロシア文献・「テチャ川の核汚染による医学、生物、環境影響」の翻訳を進め、その一部を、拙著「ソ連の核兵器開発に学ぶ放射線防護学」医療科学社2010に収録した。特に、ソ連時代の兵器用プルトニウム製造過程での環境核汚染と食物連鎖によるテチャ川流域住民の内部被曝での骨格および歯のストロンチウム90取り込みの科学の概要である。関連して、製造施設の概要、核爆発実験の情報を収めた。 前歯含有のSr-90量推定について、モンテカルロ計算の方法を検討中であるが、まだ結果は出ていない。
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