本年は、平成23年3月11日の宮城沖地震M9.0により発生した津波に誘発された福島第一原子力発電所放射線災害を受けて、Sr-90を含む放射性物質が放出された核災害における放射線衛生調査に、本研究の一環として位置づけて取り組んだ。最初に福島をはじめ東日本の広範囲について、環境および住民の放射線衛生について検査した。外部被曝、内部被曝(ヨウ素、セシウム他)について、偲人線量計ならびに、ポータブルホールボディーカンターによるその場評価を実施した。 札幌および青森では、顕著な核分裂生成物は検出されなかった。仙台、福島、東京でのガンマ線スペクトロスコピーで、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137が顕著に検出された。福島から少量持ち帰った土壌を5月に測定すると、ヨウ素131は消滅していた。 甲状腺に蓄積されるヨウ素131による内部被曝線量検査が成人希望者総数76人に対して行われた。検査当日の福島県民66人のヨウ素放射能の最大値は3.6キロベクレル、平均1.5キロベクレル。6人は検出限界0.1キロベクレル未満であった。20km圏内浪江町からの避難者40人の平均甲状腺線量は5ミリシーベルト、チェルノブイリ被災者の1千分の1以下程度と、甲状腺がんのリスクは無いと判断する。 調査結果は、現地被災地での報告会や説明会、そして学会報告、図書の刊行、科研費成果資料の作成、一般紙上も含む論文発表、新聞・テレビ・ラジオ、独自のインターネット上での情報発信である。福島低線量事象の科学報告に加え、研究代表者の以前の海外核事象調査との比較を解説した。年度末には、科研費セミナーを東京と大阪の2か所で開催した。
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