研究課題
放射線適応応答のうち、特にヒトリンパ芽球由来細胞AHH-1におけるHPRT遺伝子座突然変異を指標とした放射線適応応答、および胎児マウスの死亡および発生異常を指標とした放射線適応応答の分子機構を解明する目的で、我々はcDNAマイクロアレイの解析を行った。ヒトリンパ芽球由来細胞AHH-1におけるHPRT遺伝子座突然変異を指標とした放射線適応応答の条件下では、M期のチェックポイント制御に機能すると考えられているdeathinducer-obliterator 1(DIDO1)遺伝子の発現が上昇することを示した。また、マウス胎児の死亡と奇形発生を指標とした放射線適応応答については、Tead3遺伝子、Csf1遺伝子およびCacna1a遺伝子の発現が変動することを明らかにした。Tead3は分化に係る転写因子であり、適応応答条件下で発現が上昇、Cacna1aはCaチャネルの制御、遺伝子発現、細胞運動、細胞分裂、細胞死等に機能する遺伝子で、適応応答条件下で発現が低下、Csf1は胎児期の器官形成に関わる増殖因子であり、高線量単回照射では発現が上昇するものの、放射線適応応答条件下では変動しない遺伝子である。これらの遺伝子の発現変動はRT-PCRによって確認した。更に、我々はTead3遺伝子とCacna1a遺伝子について、胎児マウス指趾原基細胞初代培養系を用いてRNA干渉法による遺伝子ノックダウンの実験を行った。そして、遺伝子をノックダウンした条件下で放射線適応応答が消失することを観察した。この結果から、Tead3遺伝子とCacna1a遺伝子が放射線適応応答に重要な機能を果たしていることを明らかにした。
すべて 2009
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