研究課題/領域番号 |
21510060
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
根井 充 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, プログラムリーダー (10164659)
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研究分担者 |
王 冰 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, チームリーダー (10300914)
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キーワード | 低線量放射線 / 放射線障害 / 適応応答 / マイクロアレイ / RNA干渉 |
研究概要 |
予め低線量放射線に当たることにより、その後の中高線量放射線に対して抵抗性を獲得する生体応答を放射線適応応答と呼ぶ。平成23年度は2通りの実験系を用い、その分子機構を調べた。 一つは、p53遺伝子のステータスが異なる種々のヒト由来培養細胞を用い、放射線誘発突然変異を指標とした放射線適応応答を解析する実験系である。予め20mGyのX線を照射してから6時間後に2Gyの粒子線照射(20keV/μm炭素イオン線、40keV/μm炭素イオン線および150keV/μmネオンイオン線)を行った場合、2Gyの粒子線照射のみの場合に比べてHPRT遺伝子座の突然変異頻度が有意に低下していることがわかった。このメカニズムを調べるため、粒子線照射後の細胞当たりのDNA2本鎖切断量(γH2AX発現量)の経時変化を調べた。その結果、予め20mGyのX線照射した場合、DNA2本鎖切断の消失速度が顕著に速くなることがわかった。このことから、効率のよいDNA2本鎖切断修復機構の活性化が放射線適応応答のメカニズムに関係していることが示唆された。一方、細胞周期とアポトーシスは、どちらも適応応答条件下で変化していないことから、主要なメカニズムではないことが示唆された。 もう一つの実験系は、マウス胎児における放射線誘発奇形発生(四肢形成異常)と致死を指標とした放射線適応応答である。我々は、これまでにこの放射線適応応答がマウスの系統に依存することを観察しているが、これが母体内環境の違いを反映しているものかどうかを明らかにするため、マウス受精卵を異なる系統のマウスに移植し、仮腹で発生した胎児における放射線適応応答を検証する実験を開始した。そして、適応応答の見られないC3H系マウスの受精卵を適応応答の見られるICR系受容体へ移植する実験系、およびその逆の移植を行う実験系を構築した。現在、移植受精卵から発生した胎児における放射線適応応答を調べている。
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