研究概要 |
航空機搭乗員の中性子被ばく線量は、従来、計算コードによる評価もしくは大型の装置で行ってきたが、簡便に実測できることが望まれている。そのためには、コンパクトな中性子線量計が必要であり、その開発を本研究では行う。まず線量計の設計には、使用する計算コードが実験結果を十分な精度で再現できる必要がある。これまで有機液体シンチレーターなどを高精度で評価ができることを実証したが、シリコン半導体素子に関する十分なデータは無い。そこで平成21年度は、線量計の最適化を行うために、モンテカルロシミュレーションにより線量計に使用されるシリコン半導体検出器、半導体素子の中性子、ガンマ線に対する応答関数を評価した。半導体素子は、ファンネリング現象により、従来の空乏層へのエネルギー付与モデルでは評価できないことを調べた。本研究では、ファンネリング現象を組み込んだモデルで、中性子により生成された粒子を輸送し、エネルギー付与領域での波高分布が得られるようにして、中性子に対する応答関数のシミュレーションを実施した。モンテカルロ計算は、世界的な利用ユーザーが多いMCNPXコードを用いた。このコードでベンチマークに使用する実験データは、産総研の標準単色中性子ビームを用いて、半導体素子の5,15MeV中性子に対する特性を実測した。ノイズをターゲットからのガンマ線分布まで計測できるまで下げた中性子による波高分布を得ることができた。現在までのシミュレーションの結果は、絶対量は近い値を示すことが分かったが、実験結果を十分に評価することができていない。これは、半導体素子を用いた中性子検出器に、シミュレーションに含まれない粒子線に関する現象が含まれているためであり、この現象を解明することで、線量計の設計をすることができる。
|