研究概要 |
リアルタイム中性子個人被ばく線量計を用いた場合、航空機搭乗員の中性子被ばく線量の計測は、計算評価よりも10倍近い過大計測が明らかになった。この原因は、宇宙陽子線によると思われてきたが、高エネルギー中性子による起因の可能性があることが、我々の実測から明らかになりつつある。航空機搭乗員の中性子被ばく線量を正しく評価するために、個人線量計に用いられているシリコン素子の中性子に対する特性が必要である。そこで、我々は加速器を用いた単色かつ高速中性子に対する応答関数の実測とモンテカルロコードを用いたシュミレーションで評価、検討を行った。シュミレーションには、我々のファンネリング現象(IEEE NS-56(1),337,2009)を組み込んだ。さらに、このファンネリング現象をより低いエネルギーまでに拡張することで、従来、実験結果に含まれる2.2MeVの反跳陽子によるピークを再現できなかったが、シュミレーションの改善により、再現することができた。シュミレーションによる応答関数は、Cf252中性子線源、DD反応による5MeV、DT反応による15MeVの単色中性子ビームの応答関数と、絶対量を含め、高い付与エネルギー領域まで良い一致を示した。これは、航空機搭乗員の放射線被ばくのうち、非中性子成分はシリコン半導体をベースとして線量計で精度良く実測できることが実験的に実証した。残りの中性子成分は、我々のシュミレーションコードを用いることにより、評価できると考えられる。さらに、精度を高めるために、他のエネルギー領域(熱中性子、数10MeV中性子)への拡張を実施し、高エネルギー加速器の中性子への応用を図る。
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