研究概要 |
Ku70の両末端に結晶構造解析からでは位置が特定できない領域(N末端側33残基,C末端側71残基)を補完した分子モデルを設計した。まず、Kuタンパク質のリング中に40merの2本鎖DNA分子を挿入し、Ku70のC末端側にあり、分子構造が既知のSAPドメイン(約50残基)を、DNA近傍に、分子表面に最も正電荷が集まっている面をDNAに向けて配置した後、SAPドメインとKuタンパク質との間を残りのアミノ酸(約20残基)で繋いだ。次に、Ku70のN末端側に33アミノ酸残基をDNA分子と干渉しないような位置に配置し、エネルギーの極小化を行った。作成した分子モデルに対して分子動力学シミュレーションを実行し、5ナノ秒間の挙動を観察したところ、これまで特定の構造をとらないと予想されていたKu70のN末端、およびC末端側のSAPドメインと結晶構造で判明している領域とを結ぶスペーサー領域にDNAと相互作用する部位がある可能性が示唆された。そこで本年度は、上記部位がDNAと結合した現象が初期構造による偶発的な事象か否かを、SAPドメインの配位位置、およびN末端側のペプチド鎖の初期構造を変えた分子モデルを用いて詳細に検証する予定である。また現在、本シミュレーションで新たにDNAと相互作用すると予想された候補部位のアミノ酸を別のアミノ酸と置換した組換えタンパク質を合成中である。今後、組換えタンパク質とDNA分子との結合能を実験によって測定し、シミュレーションの結果と比較する予定である。
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