研究概要 |
2つのサブユニット(Ku70,Ku80)から構成されるKuタンパク質には結晶構造解析からでは位置が特定できない領域が存在する。このうちKu70のN末端側33残基,C末端側71残基を補完した分子モデルを構築し、分子動力学シミュレーションを行い、DNAとの結合能に関与するアミノ酸部位を予測した。一昨年までの結果からKu70のN末端、およびC末端側のSAPドメインと結晶構造で判明している領域とを結ぶスペーサー領域にDNAと相互作用する部位がある事が示唆された。このDNA相互作用部位には3つのリジン残基(K539,K542,K544)が存在し、これらのリジン残基がDNA分子と静電気力によって相互作用していると考えられる。昨年度は予想されたDNA相互作用部位の挙動を観察する為に、SAPドメイン、およびスペーサー領域の位置を変えた分子モデルを複数作成し、それらを初期構造としてナノ秒オーダーのシミュレーションを繰り返し行った。その結果、3つのリジン残基が存在する領域は、DNAだけでなくKu80上のアスパラギン酸残基(D369,D370)とも相互作用する可能性が示唆された。本年度は、これらの候補残基のDNA末端認識機構における役割を解析する。また、候補部位のアミノ酸を別のアミノ酸と置換した組換えタンパク質を合成し、DNA分子との結合能を実験によって検証することでシミュレーションの結果と比較する。
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