研究概要 |
原爆等による急性被爆がヒトに及ぼす影響は、研究代表者の所属する(財)放射線影響研究所を始めとして各研究機関において解明されてきているが、低線量慢性被爆による健康への影響は未だ十分に調査されていない。本研究課題においては、旧ソビエト連邦の度重なる核実験により、長期にわたる低線量慢性被爆が見られるセミパラチンスク旧核実験場近郊住民を対象として疫学データベースを構築することにより、低線量慢性被爆の健康影響を明らかにしようと試みている。データベースへの、今年度の死亡情報に関するデータ登録を年度当初2万件と予定していたが、現地データベースサーバーの2009年10月の故障により、当初の予定に達することができず、計画を約2,500件下回る6,846件に留まった。現在までに採録し、入力した個人情報は、総件数166,446件で、死亡情報の総件数は86,846件である。 これらの疫学データ、特に死亡情報により、セミパラチンスク州での乳幼児における感染症による死亡に地域格差があること、また死亡の第一因は循環器疾患であり、次いで呼吸器系の疾患、悪性新生物と続くことが明らかとなってきた。疫学解析用データベースから得られるこれらの情報は、国民の健康衛生の向上を図る上で大きな意義を持つものであり、研究代表者が当地で行ってきた情報公開のための説明会と講義を通して、極めて重要な情報として評価を得、保健省のドスカリエフ保健大臣に報告することが求められている(2010年6月説明予定)。また本課題では、現地プログラマーを日本に招聘し、現地研究能力の向上へ寄与することを予定している。
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