遺伝子CYPIAlの発現は、外来異物であるTCDDやベンゾ[a]ピレンがダイオキシン受容体(AhR)に結合することにより、AhRが核内へ移行し、ARNTと二量体を形成、XRE配列への結合により起こる。これまで、CYPIAlプロモーター領域に、Sp1、CREMという因子が転写の状態にかかわらず常に結合していることを明らかにしてきた。さらに、転写が抑制されているときには、HDAC1というピストン脱アセチル化酵素が結合し、ヒストンアセチル基転移酵素活性を持つCBPが結合する結果を得た。 CREMあるいはSp1がHDAC1と、CREMとCBPが相互作用している可能性を検証するために、抗Sp1抗体、抗HDAC抗体、抗CREM抗体、抗CBP抗体を組み合わせることにより、Re-ChIPアッセイ法を行った。最初にSp1抗体で免疫沈降し、10mM DTTを加え15分間室温でインキュベートして抗体を失活させる。その後、HDAC1抗体を加えて再度免疫沈降し、DNAを回収してPCRを行う。その結果、転写が起きていないときには、Sp1とHDAC1の結合が観察され、転写が開始されるとこの結合が外れることが示された。一方、CREM-CBPは、転写がOFFのときには結合しておらず、ONになると結合することが示された。このことから、Sp1からHDAC1が外れることによって、CBPが呼び込まれるものと考えられた。これにともなって、転写の本体ともいえるRNAポリメラーゼIIが、プロキシマル・プロモーターに呼び込まれ結合することも、Re-ChIPアッセイ法によって明らかにされた。
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