研究課題
本研究は、環境化学物質曝露による炎症性腸疾患の発症・増悪のメカニズムの解明を目的とする。クローン病や潰瘍性大腸炎炎に代表される症性腸疾患は難治性であり、大腸癌を合併することの多い疾患である。その病因は不明であるが、腸菅粘膜局所におけるTh1、Th2、Th17による過剰免疫応答が関与していることが明らかになりつつある。平成21年度の本研究では、アゾキシメタン腹腔内投与により発がんを惹起し、デキストラン硫酸ナトリウムの自由飲水による大腸炎症を介した発がん促進系(AOM/DSS大腸発がん系)を用いて強い酸化ストレス作用を有する環境化学物質トリブチル錫の大腸炎症増悪作用と発がん促進作用を検討した。トリブチル錫の腹腔内投与により、体重減少と大腸短縮が加速されており、大腸炎症が増悪されていた。さらに大腸炎症の増悪に伴って、大腸に発生するポリープ数が増加し、H&E染色による病理組織学的解析と免疫組織染色によるb-カテニンの核内集積の解析から大腸発がんが促進されていることが明らかになった。大腸炎症と大腸発がんにおける酸化ストレスの関与を調べるために、抗酸化因子チオレドキシンを過剰発現するトランスジェニックマウスにAOM/DSSによる大腸発がんを誘発した結果、大腸発がんが抑制されていた。これらの結果から、環境化学物質トリブチル錫は酸化ストレス作用を介して大腸炎症を増悪し、大腸発がんを促進している可能性が示唆される。
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Immunobiology (印刷中)
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