研究概要 |
化学物質によるヒストン修飾並びにヒストン修飾変化が起こった際の紫外線によるDNA損傷、修復の変化を明らかにする目的で、本年度は各種化学物質作用および紫外線照射後に誘導されるヒストン修飾の変化について検討を行った。ヒストン修飾については、ヒストンH3(S10)のリン酸化とヒストンH3(K9, K14)のアセチル化に焦点を絞り検討した。 種々の化学物質によるヒストン修飾変化を検討した結果、ナノサイズの二酸化チタン粒子、銀粒子、タバコ副流煙、ホルムアルデヒドにより、明らかなヒストンH3(S10)のリン酸化が誘導された。また、H3(S10)のリン酸化に伴って誘導されるという報告があるH3(K9, K14)のアセチル化もわずかに上昇した。一方、多環芳香族炭化水素のベンゾピレンやニトロソアミンなどではそれらの修飾は誘導されなかった。アセチル化の誘導は、遺伝子発現の変化に繋がるものであり、化学物質による変異、発がんの観点から重要である。さらに、紫外線照射、特に長波長紫外線であるUVAが時間依存的に2相性のヒストンH3(S10)のリン酸化を示した。また、ヒストンH3(S10)のリン酸化とは相関していなかったが、ヒストンH3のアセチル化を示した。紫外線B照射によりヒストンリン酸化が誘導されるという報告はなされているが、長波長である紫外線Aによる報告はない。特に、ヒストンH3(S10)のリン酸化が照射直後と数時間後に2相性をもって誘導されたことは新規な知見である。以上、化学物質と紫外線照射によるヒストン修飾変化を明らかにしたので、今後、ヒストン修飾が誘導されている状態での紫外線(UVB)照射後のDNA損傷の誘導、その修復に対する影響を検討していく予定である。
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