研究概要 |
本研究では目的に則し、主に造血幹細胞ニッチ・シグナルによるAhRの制御に関する研究に重点をおいて進めることとした。1)AhRの造血器での発現について:まず、造血幹・前駆細胞での遺伝子発現の検討に先立ち、造血幹・前駆細胞分画としてLKS(分化抗原(Lin)陰性、c-Kit陽性、Stem cell antigen(SCA)-1陽性)分画をセイルソータで分取し、この分画での遺伝子発現検索を進めた。結果として、AhRの発現は、LKS分画では明瞭に認められるが、骨髄細胞全体では、トレース程度に留まり、末梢血有核細胞では認められず、造血器におけるAhRの発現が、未分化幹細胞に限局していることが確かめられた。2)LKS分画による発現遺云子解析の予備検討について:LKS分画は、定常状態では骨髄の約0.06%程度であること、当研究者らが安定的にRNAを回収できる細胞数は、約5×10^4程度であること、などの予備検討結果を踏まえ、3~5匹分の骨髄細胞からLKS分画を分取してRNAを回収し、解析することとした。また、DNA chipを用いた解析には、鋳型として得られたRNAを増幅する処置が必要であることが明らかとなったため、骨髄細胞由来のRNAの増幅の有無による2検体、及び、幹細胞分画由来のRNAの増幅検体による予備的Gene chip解析をおこなった。その結果、主要因解析の第一要因で、RNAの増幅の有無が分別要因となることから、幹細胞分画由来のRNAの増幅検体による発現遺伝子を骨髄細胞のそれと比較する際には、従来のデータは基本的には使えず、同一手法で調整した検体のデータを新たに用意する必要があることが明らかとなった。更に第二要因でLKS分画は骨髄と分離したが、contribution scoreが0.98より大、若しくは-0.98未満であった388 probe setsのうち、幹細胞分画での発現遺伝子リスト(Ivanova,2002)との重複は20 probe setsに留まった。
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