研究概要 |
建設混合廃棄物篩下残渣については,硫化水素発生の懸念から安定型処分場での埋立が困難となっている.処分場は硫化水素発生の必要条件である有機物が豊富であることから硫酸イオンを含有するこれらの材料からの硫化水素発生は避けられない.但し,篩下残渣に関しては,それ自身の有機物含有量が必ずしも多いわけではなく,処分場以外の有機物の少ない場での利用可能性について検討する余地があると思われる.本研究では,一般環境中における硫化水素発生リスクを評価することを目的に,廃石膏ボード,篩下残渣3種,および硫酸を含有する肥料2種,同土壌改良材5種を対象に,告示13号法による溶出試験,またシリアルバッチ試験を実施し,溶出する有機物についての分画を行い,硫化水素発生可能性について比較した. 13号法で溶出した有機物を炭素換算し,TOCを100%とした場合,篩下残渣では,グルコース,酢酸,乳酸でTOCの約3割を占め,必ずしも全てのTOCが容易に硫酸還元菌に利用されるものではないことが確認された.残りの成分について,E260から腐植物質の寄与,及びHPLCの未定量ピークから他の有機酸の存在を検討したが,特定には至らなかった.シリアルバッチ試験の結果,硫酸イオンについては,大半の試料で,L/S=15まで石膏の溶解度に相当する硫酸イオンが継続して溶出した.一方,有機物に関しては,1種の肥料で低LS時に急激な有機物の溶出が認められたが,それ以外の石膏含有材料での溶出TOCは高くなかった.篩下残渣に関しては,酢酸とプロピオン酸はL/S=2,乳酸はL/S=8で溶出が停止したが,グルコースはL/S=15でも溶出が継続する傾向が認められた.これらより,篩下残渣に関しては,L/S=15程度で硫酸イオンの溶出とともに,嫌気性菌の基質となるグルコースの溶出が継続するため,硫酸還元の条件は充足される可能性が伺われた.
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