研究概要 |
昨年度の研究から,篩下残渣中の有機物量が少ないものの,グルコース溶出は長期間継続して起こり,硫酸還元の条件が充足する可能性が疑われた.しかしながら,固体TOCが概ね5%であるのに対し,溶出したTOCはその1%程度,さらにSRBに利用可能な有機酸とグルコースはその2割であり,硫酸還元に寄与するTOCは固体中TOCの僅か0.2%ということになる.これは換言すれば,固体中には99.8%の有機炭素が残存するということを意味する.そこで,今年度はこの大量に残存している固体中の有機炭素が微生物分解を受けてSRBに利用され得るのか否かを,固体中の小粒径物物理組成分析,繊維分析,およびメタン生成ポテンシャル(BMP)試験から確認した.残渣中の各組成の重量割合は,約72%が金属・不燃物等の灰分であり,木が約4%,紙が約13%,プラスチックが約1%,重液溶解分が約10%であった.また,残渣中の各組成のTOCへの寄与率をみると,非分解性であるプラスチックが約2%で,木が約29%,紙が約68%(繊維分析では,易分解性のヘミセルロースが約17%,易~難分解性のセルロースが約38%,難~非分解性のリグニンが約32%)で,溶出性有機物が約1%であった。BMP-testでは,開始1週間での累積ガス発生量は3~6mL/g-VSであった.残渣中TOCのうち溶出性TOCが全てガス化した場合,理論的には約6mL/g-VSのガス発生量となることから,短期間に分解された残渣中TOC量は溶出性TOC量とほぼ一致する.開始1週間以降はガス発生速度は緩やかになり,徐々に比較的分解されやすいヘミセルロース等の残渣中の非溶出性有機物が長期的に分解されていくと考えられることから,硫化水素大量発生に寄与する破砕選別残渣中の有機物は溶出性TOCのみであり,その量は残渣中TOCのうちの約1%である.
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