研究概要 |
これまで篩下残渣は石膏ボード由来の硫酸イオンを多量に含むものの,溶出する有機物は残渣中TOCの1%程度であること,TOCや硫酸イオンの溶出量が一般的に利用されている土壌改良剤や肥料と同程度であること,組成の大部分をコンクリートが占めるためにpHが12程度であり,微生物活動が阻害されることを明らかにしてきた.これは,篩下残渣を安定型埋立地や一般環境中で利用した場合に硫化水素の発生が抑制される可能性を示すものである.そこで,本年度は篩下残渣の安定型処分または路盤材等としての利用可能性を議論するために,(1)硫化水素生成を確認するバッチ実験,(2)TOCや硫酸イオンの希釈・洗い出し,CO2による中和を考慮したカラム試験,(3)硫化物としての捕捉の有無の確認,を実施し,硫酸塩還元反応の生起と硫化水素発生可能性について検討した.バッチ実験では,中性化した試料では約250ppmに達する高い濃度の硫化水素が確認されたが,pHの高い試料では硫化水素は確認されなかった.カラム試験は,一般環境利用を想定した条件等,計6系列で行った.バッチ実験でpHの高かった試料でも,本試験条件では2~3週間でpH=7~8まで低下した.pH,硫酸イオン濃度等,すべての系列がSRBの生育条件を満たしたが,ヘッドスペース中に硫化水素はほとんど検出されなかった.これは,硫酸塩還元が起きても試料内のFe等に硫化水素が捕捉されたためと推察された.但し,8週経過後に行ったXRD分析においてもFeSとCaSのピークの確認には至らなかった.以上より,篩下残渣から高濃度の硫化水素ガスが外部へ放出される可能性は低いことが判明したが,浸出液中のTOC濃度は56日経過時点でも200~500mg/Lを維持しており,路盤材等として利用する場合や安定型埋立地に処分するためには廃水処理を必要とするレベルであることがわかった.
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