ポリ塩化ビニル(PVC)やナイロンなどの異種プラスチックを含むポリオレフィン廃棄物を芳香族系石油化学原料へ分解するケミカルリサイクル技術を確立するため、少量の異種プラスチックに耐性を示す多機能分解触媒の開発を行った。まず、ポリオレフィンの分解に有効なGaシリケート触媒の活性に対する異種プラスチックの影響を検討したところ、ナイロンはPVCと同様に触媒活性を低下させることがわかった。ナイロンから発生する有機窒素化合物の縮合による炭素様物質の析出が活性低下の一因と考えられ、失活した触媒を空気酸化すると活性は回復した。次に、種々の金属成分の添加によるGa触媒の多機能化を検討したところ、Alの添加が効果的なことがわかった。Al添加によって触媒の耐塩素性と耐窒素性は向上し、PVCとナイロンによる影響が1/2~1/3に抑制された。その結果、PVCあるいはナイロンを0.5~1.0%含むポリオレフィンの分解においても、芳香族炭化水素収率50%以上を達成することができた。GaとAlをシリケート骨格に含む水熱合成触媒は耐塩素性・耐窒素性ともに高かったのに対して、ゼオライトにGaを担持した触媒系では、耐塩素性に優れていても耐窒素性は低いものが見られ、触媒調製の最適化を図ることの重要性が示唆された。 高純度の廃ポリオレフィンを得るために異種プラスチックの高度除去を行うことは、選別前処理工程の負荷が大きくコスト高になりがちである。耐塩素性・耐窒素性を有する多機能分解触媒の開発によって、選別前処理工程の負荷を軽減したリサイクルプロセスの構築が可能になると考えられる。
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