廃プラスチックの主成分であるポリエチレンをベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族石油化学原料へ分解するケミカルリサイクル技術を確立するため、微量のポリ塩化ビニル(PVC)やナイロンに耐性を示す多機能分解触媒の開発を行った。前年度の研究から有望と見なされたZn担持H-ZSM-5は0.5%程度のPVCやナイロンの存在下でも優れた触媒活性を示すことがわかった。Zn担持量は1~2wt%が最適であった。Zn/H-ZSM-5の耐塩素性はポリエチレンの反応だけでなく、C_5~C_8炭化水素の分解でも確認され、従来のGa/H-ZSM-5と同等かそれよりも高い耐塩素性を示す触媒であることがわかった。次に、ZnおよびGa担持H-ZSM-5触媒を用いるポリエチレンの分解において、PVCとナイロンの影響を比較したところ、ナイロンの方がPVCよりも影響は大きいことが明らかになった。しかし、ナイロンとPVCは共存するとそれぞれが単独で存在するよりも影響は小さくなる場合があった。この現象については今後詳細な検討を要するが、ナイロンとPVCから発生する成分同士が反応して触媒への影響が低減することが示唆された。なお、ナイロン6とナイロン66で検討したところ同様の結果が得られ、ナイロン種による差異は認められなかった。これらの結果から、Zn、Ga、Alを組み合わせたメタロシリケート触媒がポリオレフィンの分解に有効であり、調製法の検討により更なる高性能化を図る予定である。
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