廃プラスチックの主成分であるポリオレフィンをベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系石油化学原料へ分解するケミカルリサイクル技術を確立するため、微量のポリ塩化ビニル(PVC)やナイロン66(PA)などの異種プラスチック存在下でも機能する触媒の開発研究を行った。前年度までの研究でGaAlシリケート系触媒が有望なことが明らかになっているので、GaおよびAlの添加方法、添加量、存在形態を制御した最適触媒調製法について検討した。その結果、触媒の活性は調製法に大きく依存し、硝酸ガリウム水溶液から含浸法でGaを2wt%担持したH-ZSM-5(Si/Al=15)が耐塩素性・耐窒素性を有する高活性多機能分解触媒であることを明らかにした。この触媒による低密度ポリエチレンの分解では、1%以下のPVC及びPA共存下で55%以上の芳香族収率が得られた。さらに、H-ZSM-5と酸化ガリウムの物理混合でも高活性触媒の調製が可能であった。モデル反応で触媒の酸性質を評価した結果、Ga/H-ZSM-5の酸点は塩化水素の影響を受けにくいことが明らかになり、このことが耐塩素性発現の理由であった。次にポリスチレン(PS)の影響を検討した。PVCやPAとは異なり、PS濃度が数%程度ならばGaAlシリケート系触媒への影響は小さいことがわかった。この結果は、PSをポリオレフィンの反応に積極的に取り込んで分解することが可能なことを示唆している。異種プラスチックに耐性を示す多機能分解触媒の開発によって、選別工程の負荷が軽減され、ポリオレフィンを主成分とする多様な組成の廃プラスチックのリサイクルが可能になってきた。
|