研究概要 |
本研究は、低温適応(好冷性ならびに耐冷性)嫌気性微生物とそれらが生産する低温活性酵素を活用した、15℃から20℃程度の低温条件下でも効率的に機能する、廃棄植物バイオマスの有用物質への嫌気的微生物変換処理システムを開発するための技術基盤の検討を目的にしている。 平成21年度は、1.微生物源に用いた水田土壌について、無酸素条件下、5℃、10℃、20℃又は30℃保温で最確値(Most probable number, MPN)計数培養を行い、5℃や10℃保温でも嫌気性微生物が10^6-10^7cells/cm^3湿土壌と30℃保温での1/5から1/50もの高い値で計数され、水田土壌試料には四季を通して低温適応嫌気性微生物が高密度で生息していることを確認した。MPN培養で増殖してきた微生物個体群の16S rRNA遺伝子のV3領域配列をPCR増幅してDGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)解析するとともに、増幅配列の塩基配列を基にした系統解析を行い、低温保温MPN培養では南極分離細菌等の低温適応嫌気性細菌を最近縁にする多様な系統の細菌が増殖し、計数されることを確認した。塩基配列決定した59配列についてはデータベース機関であるDDBJ(GenBank)に登録した。2.昨年度来維持してきた水田土壌由来の各植物バイオマス(稲ワラまたはろ紙)分解メタン生成集積培養系のバイオマス分解能とメタン生成能の安定性を調べ、低温嫌気微生物処理システムの微生物源としての利用が可能と思われる、10℃又は20℃保温の各稲ワラ分解系と20℃又は30℃保温の各ろ紙分解系の計7系統の集積培養系を選抜した。加えて、3.平成20年度に5℃保温MPN培養から分離していた20細菌分離株について系統的位置と生理的特性を調べるとともに、新たに10℃保温MPN培養から32菌株の嫌気性微生物を純粋分離した。
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