本研究は、低温適応(好冷性と耐冷性)嫌気性微生物やそれらが有する低温活性酵素を活用した、地下水温程度の温度条件下(15-20℃)でも効率的に機能する、未利用植物バイオマスの有用物質への変換処理システムの創出に向けた技術基盤についての基礎的検討を目的にしている。 平成22年度は、1.ろ紙又は稲ワラ添加培地での各種系統の植物バイオマス分解集積培養の内から、10℃保温稲ワラ分解培養系1系統、20℃保温のろ紙又は稲ワラ分解培養系各1系統と2系統の30℃保温ろ紙分解培養系の計5系統の培養系を選抜し、10℃から30℃の温度域でのバイオマス分解とメタン生成を調べた。10℃保温集積培養系は15℃から20℃の温度域で最も活発に稲ワラを分解し、20℃保温と30℃保温の各集積培養系も20℃保温で活発にバイオマスを分解したが、メタン生成の進行はどの培養系も15℃以下で不安定であった。2.16S rDNAのV3領域配列のPCR-DGGEによる群集構造解析では、2系統の30℃保温ろ紙分解集積培養系にそれぞれろ紙添加培養に特有の細菌バンドが検出され、セルロース分解性細菌が集積されていることが示唆された。3.昨年度に10℃保温MPN培養から分離した32純粋菌株の増殖温度域と16S rDNAのV3領域の塩基配列による系統的帰属を調べた。32菌株の内の13菌株は好冷性で増殖の上限温度が20℃ないしは25℃未満であり、残りの19菌株は0℃又は5℃から30℃の温度域で増殖して耐冷性であった。系統的には32菌株にはFirmzcutes門のClostridiales目Clostridium属やBacillales目Paenibaoillus属、並びにGammaproteobacteria綱のAeromonadales目Aeromonas属の好冷性細菌や耐冷性細菌が最近縁に関係づけられた。
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