日本で溶融高炉スラグの排出に伴って排出される熱は、日本全体の石炭使用量の約2%に相当するが、溶融スラグからの熱回収は行われていない。溶融高炉スラグからの熱回収プロセスとして、流動層へ溶融スラグを滴下して層内で固化させ、そのときに発生する熱を流動媒体へ移動し、流動媒体から層内伝熱管へ導き、その伝熱管から高温高圧蒸気として熱回収をすることを提案した。このプロセスを実用化するための基盤研究として、模擬スラグ(溶融ワックス等)と流動媒体を流動層に連続供給し、固化模擬スラグを底部から連続排出するコールドモデル実験を行った。本年度は模擬スラグの物性値として粘性が模擬スラグ固化物への粒子取り込み量に及ぼす影響を評価した。各種模擬スラグを用いて実験を行ったところ、同一の模擬スラグならば粘性が高いほど粒子取り込み量が低下することがわかった。しかし、実用化を考えると粘性を高くすることはすなわち溶融スラグを予備的に冷却する必要があることであり、これは熱回収にとって不利な状況である。また溶融スラグ粘性が低くて取り込み量が多いほど塊が大きくなり排出が円滑にできなくなる懸念がある。そこで、本年度では、スラグ液滴の粒径を制御するための新しい方法として、流動媒体を一部抜き出して高速の気流中に分散させて、スラグ液に吹き付けることで、そのせん断力をつかって液滴を小さくすることを提案し、実験装置を改造してコールドモデル実験を行った。スラグ液に流動媒体含有高速気流を吹き付けることで生成する塊の大きさを小さく制御できることがわかった。
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