研究概要 |
ポリ乳酸(PLA)は、石油系プラスチックの代替材として開発・上市されている循環型生分解高分子材料である。ポリ乳酸を基にした生分解性プラスチックは、焼却したり埋立てたりしても、環境に対して負の影響は与えることはほとんどない。しかしながら、生産過程で出る余剰プラスチックや市場で廃棄されるプラスチック製品を環境保全・浄化技術へ有効利用することにより、さらなる環境負荷の低減につなげられる。本研究では、生物学的脱窒プロセスにおいてしばしば問題となる電子供与体不足の対策として、これらの廃棄されるPLAを利用した固相脱窒技術に関する研究を行った。固相脱窒技術の利点は、(1)従来のメタノールなどの液状基質添加に伴う付帯設備コストが軽減出来る点、(2)固形基質であるため、還元力をゆっくり安定的に供給でき、扱いも容易である点などを挙げることができる。しかしながら、これまでの研究において、PLAは、その物性的特徴から加水分解が進行せずに固相脱窒技術の基質としては不向きであるという知見を得ている。そこで本研究では、PLAを固相脱窒技術へと利用するために、(i)加水分解を促進させる適切なPLA改質条件を調査した。(ii)その後、最適な改質PLA添加量を調査するとともに、それらの改質PLAを用いて実際に回分式脱窒プロセスを用いて評価した。その結果、重量平均分子量10,000g mol-1および結晶化度40%程度の改質PLAが、固相脱窒法には好適あることを明らかにした。また、硝酸除去能力が最適となるPLA添加量を明らかにするために、最適化された改質PLAを用いて硝酸除去能力を評価した。その結果、反応槽内液容量あたり改質PLAを3%添加した場合が最も有効であることを明らかにした。
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