ポリ(L-乳酸)(PLLA)廃材は、脱窒反応において不足しがちな電子供与体を簡便・低コストで供給する廃水処理技術(固相脱窒技術)として有効的に利用することが可能である。先の報告では、PLLAの物性を最適化することにより加水分解が促進され、PLLAを脱窒反応の電子供与体として有効に機能することを示した。しかしながら、PLLA添加固相脱窒反応槽内において、PLLAから加水分解された乳酸を電子供与体として利用する脱窒細菌の動態や多様性に関する詳細な情報は分かっていない。そこで本研究では、脱窒細菌が持つ2種の亜硝酸還元酵素遺伝子(nirSおよびnirK)から転写されるmRNAを標的として、反応槽内で高活性に機能する脱窒細菌群の遷移や多様性を明らかにすることを目的とした。 [方法と結果]重量平均分子量(約1万g/mol)、結晶化度(40%)に改質したPLLAを添加して運転した固相脱窒反応槽内汚泥よりRNAを抽出し、nirSおよびnirK-mRNAを標的としたリアルタイム定量PCR、T-RFLP法を基にした多次元尺度分析、およびクローンライブラリー解析を行った。その結果、PLLA添加反応槽内では、nirSおよびnirK-mRNAの転写量は硝酸除去速度に関連した増減が観察された。運転期間中、反応槽内ではnirS遺伝子を持つ十数種の脱窒細菌が主体的に機能しており、運転が進行するにつれて特定の脱窒細菌種に収斂することが分かった。さらに、nirS-mRNAを基にした詳細な系統解析を行った結果、コマモナス科細菌、アゾアルカス属細菌およびアリサイクリフィリス属細菌などが主要な脱窒反応を担っていることが分かった。
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