研究課題
本研究では重金属蓄積性樹木のヤナギを研究材料に用い、その金属蓄積機構を解明し、土壌の浄化技術を開発する。野生のヤナギ類の種の鑑定は非常に難しく、また、自然条件下でも容易に交雑することから、実験材料としては、京都大学生態学センターで維持、栽培されている、種鑑定が確実な6種のヤナギを用いた。ヤナギの枝を、ポットに入れた砂に挿し木して生育させ、バイオマス増加量を測定することにより初期成長を比較した。その結果、カワヤナギ、ジャヤナギの初期成長速度が速く、イヌコリヤナギ、コゴメヤナギ、タチヤナギは中程度、マルバヤナギは成長が遅いことが分かった。このうち、重金属蓄積性が報告されているイヌコリヤナギを比較対照に、初期成長の早いカワヤナギ、ジャヤナギの重金属耐性を調べた。カワヤナギはイヌコリヤナギよりもCd耐性が強く、葉でのCd濃度も高いことが判明した。Cd処理した植物体を部位別にサンプリングし、Cdの蓄積部位を調べた。ICP-AES分析の結果、木化した枝の樹皮において、最もCd濃度が高かった。重金属の蓄積部位とその化学形態をさらに詳しく調べるため、シンクロトロン放射光を用いた分析を行った。葉のμ-XRF(蛍光X線)イメージングを測定し解析したところ、鋸歯先端にCdが高濃度に蓄積していることが判明した。木化した枝での重金属分布を同様にμ-XRFイメージングで調べたところ、樹皮のコルク皮層もしくはコルク形成層にCdの蓄積が確認された。また、μ-XANES(X線吸収端近傍構造)を測定して、この細胞でのCdの化学形態について検討したところ、Cdの解毒に働くとされる硫黄化合物との結合で観察されるCd-Sのスペクトルとは一致せず、Cd-0もしくはイオン状態のCdと近いことが判明し、樹木に特異的な重金属解毒機構の存在が示唆された。また、重金属集積植物研究者の学問領域を超えた交流を目指したシンポジウム「-Metal hyperaccumulator-植物の金属集積機構の解明とその応用に向けて-」を企画、開催した。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 図書 (1件) 備考 (3件)
Plant Cell Physiology
The 9th International Conference of the East and Southeast Asia Federation of Soil Science Societies (ESAFS), Proceedings
ページ: 77-78
http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/houga/researches/2009m03.html
http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/articles/symposia/Symposium-0147.html
http://www.nodai.ac.jp/teacher/symposium/index.html