研究概要 |
本研究では、メチル水銀、カドミウム等の重金属を植物に高蓄積させるための新規バイオエンジニアリングを施すことにより、汚染地域の浄化と重金属のリサイクルを目指した次世代型低負荷環境修復技術を確立することを目的とした。トランスジェニック植物の作出に際しては、(1)細菌由来の重金属トランスポーター(MerC,MerE,MerF)の植物細胞膜局在化及び重金属輸送能の付与、(2)MerCの植物解毒器官である液胞膜局在化及び重金属液胞隔離(高蓄積)能の付与という二段階構想をもっている。細菌由来のMerCは無機水銀・カドミウムのトランスポーター、MerEおよびMerFはメチル水銀・無機水銀のトランスポーターである。また、シロイヌナズナ由来のSNAREファミリーのAtVAM3は液胞膜に、SYP121は細胞膜にそれぞれ特裏的に局在する一回膜貫通型の膜タンパク質である。本研究では、MerE存細胞膜へ効率的に輸送させるために、輸送制御タグとしてSYP121を融合したmerE-SYP121融合遺伝子を作成し、植物ベクターpMAT137に組換え、常法に従いシロイヌナズナに形質転換した。次に作成した遺伝子組換え植物を用いて、ゲノムPCRにより目的遺伝子のゲノムへの組換え、RT-PCRにより目的遺伝子の発現をmRNAレベルでそれそれ確認した。さらに遺伝子組換え植物体の水銀耐性および蓄積性について検討した結果、merE遺伝子組換えシロイヌナズナ、merE-SYP121遺伝子組換えシロイヌナズナそれぞれにおいて、メチル水銀耐性は野生株とほぼ同程度であったが、メチル水銀蓄積性は野生株に比べそれぞれ有意に上昇した。以上の結果より、merEおよびmerE-SYP121遺伝子組換え植物体はそれぞれ、メチル水銀耐性を低下することなくメチル水銀高蓄積性を示し、メチル水銀浄化に適していると考えられた。
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