研究概要 |
pHや流入基質を正確に制御した回分式反応槽を用いてポリリン酸蓄積細菌を培養した。酢酸を単独基質として嫌気好気法により運転し,高濃度に蓄積したRhodocyclus属近縁のポリリン酸蓄積細菌を得た。その汚泥を適宜採取し,バイアル実験により,好気的亜硝酸脱窒による亜酸化窒素生成特性を調べたところ,気相部酸素濃度が低いほど亜硝酸脱窒の進行が速く,亜酸化窒素生成量も多いことがわかった。しかし,亜硝酸脱窒量で除して転換率を求めたところ,いずれも50-70%付近であり,酸素濃度による転換率の差異は明確ではなかった。並列で行ったアンモニア酸化細菌に対する実験で,その転換率がせいぜい数%であったことから,Rhodocyclus属近縁のポリリン酸蓄積細菌は高いN20生成ポテンシャルを有していると考えられた。今後,更なる検証を行い,亜酸化窒素の生成量を予測可能なモデルの構築を進めて行くとともに,実処理プロセスにおける亜酸化窒素の生成対する寄与を求めて行きたいと考えている。 また,反応槽基礎試験として,内部循環型の反応槽を構築し,制御された系で亜酸化窒素の生成条件を調べることを試みた。予想に反し,空気循環ポンプの気密性は必ずしも担保されず,内部循環方式において外気の取り込み量を確実に測定することは困難であった。しかしながら,散気装置の工夫と亜酸化窒素測定精度の改善により,微量の変動についても追跡可能であることを確認した。今後,酸素の水への溶解/揮散特性を同時に調査し,包括酸素移動容量係数(kLa)を指標として亜酸化窒素の溶解/揮散量を定量的に表現する方法を確立し,実験室レベルの連続処理反応槽において正確に亜酸化窒素生成量を求めるための方法を確立していきたいと考えている。
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