研究概要 |
温室効果ガスとして知られている亜酸化窒素は,排水処理施設において生物学的窒素処理工程で生成することが知られている。我々はこれまで酢酸で培養したポリリン酸蓄積細菌が亜硝酸を好気脱窒することを示してきたが,その生成物質にも亜酸化窒素が含まれる可能性がある。そこで本研究では,ポリリン酸蓄積細菌の亜酸化窒素生成能を明らかにする研究の一環として,特に溶存酸素濃度に着目してその影響を調べた。 酢酸を主基質として酸化態窒素の暴露を受けていないリン蓄積能を有する汚泥を培養した。酸化態窒素の曝露を避けたのは,脱窒能力の大小によって好気的亜硝酸脱窒能が異なるという既存の研究成果から,初めに脱窒能力を有しないポリリン酸蓄積細菌について調べるためである。このようにして培養した脱窒能力を有せず高度にリン蓄積可能な汚泥に亜硝酸を好気脱窒させたところ亜酸化窒素の発生が認められた。ポリリン酸蓄積細菌が亜硝酸を脱窒し,亜酸化窒素の生成をおこなったと考えられる。 様々に酸素濃度を変えて亜酸化窒素生成量を調べたところ,本研究で得られた亜硝酸源少量当たりの亜酸化窒素転換率は,55から90%という高率であった。また,共存酸素の有無や亜硝酸濃度による影響が観察されなかったことから,本研究で使用したリン蓄積細菌は高い亜酸化窒素生成ポテンシャルを有していると考えられる。なお,亜硝酸の減少速度自体は,酸素濃度の影響を受けたため,亜酸化窒素の生成を抑制するには,酸素濃度が高い条件が望ましいことが示唆された。 本研究により,これまで注目されてこなかったポリリン酸蓄積細菌も亜酸化窒素生成能を有していることが示された。今後,脱窒能力の有無や細菌種による相違を明らかにし,実排水処理施設における亜酸化窒素生成に対するリン蓄積細菌の寄与を検証する必要があると考えている。
|