金属元素によって汚染された土壌・水環境を、環境に優しく修復する技術、すなわち重金属土壌汚染を安価に効率的に措置できる技術が求められている。そこで、われわれの発見した新規な放線菌株ST13を技術開発のモデルとして使用し、六価クロム汚染土壌の浄化を、低コストかつ高効率にするための土壌での活性制御法を検討した。 これまでの研究で、細菌による六価クロム浄化能を活性化する物質を探索して、黒糖溶液に強い活性化能があることを発見した。その活性化には黒糖の濃度依存性がみられること、さらには産地の異なるものでも有効なことを見出した。黒糖溶液は食品であるために安全性が高い。さらに利用コスト面で有利な廃糖蜜が、黒糖の場合と同様に細菌による六価クロム浄化能を活性化することを見出している。このように溶液に溶解している六価クロムは、ST13株によって低コスト高効率に減少させることが可能と考えられた。 一方、六価クロムは減少しても、全クロム総量は変化しない。興味深いことに、全クロムが水溶性画分から沈殿性画分に時間と共に移ることを見出した。そこで沈殿画分のクロムの分子形態をXANES解析し、Cr(OH)_3であることを同定することができた。Cr(OH)_3は不溶性の極めて安定な無害物質として知られる。したがって六価クロムは、ST13株によって安全な三価クロムとして沈殿させることが可能と考えられた。 微生物担体として、気孔を有するセラミックス多孔質体を検討し、開口部を有する単体においてST13株の保持が高いことを見出した。さらに、ST13株は特定の表面荷電を持つセラミックスに吸着する傾向を有することを見出し、その性質はセラミックス選択の一指標として使用可能と考えられた。セラミックスに固定化したST13株は六価クロム浄化能を有したことから、ST13株が生育する物理的環境を作ることは可能と考えている。
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