研究概要 |
本研究は組換え型アリルハイドロカーボン受容体(AhR)を介したβ-グルクロニダーゼ(GUS)レポーターの遺伝子誘導発現系を導入した遺伝子組換え植物を作出し、それを用いて、環境と食料のAhRリガンドのバイオケミカルアッセイを行った。ダイオキシン様化合物は難分解性でしかも脂溶性が高いために土壌中では土壌粒子や有機物に吸着して存在する。それらは、植物の根系から受動拡散によって取り込まれるが、極めて取り込まれ難い化合物が多く存在する。そこで、ダイオキシン様作用物質のバイオアベイラビリティーに関して、バイオサーファクタントやキャリアー蛋白質などの利用を試みた。これまでに、組換え型アリルハイドロカーボン受容体(AhR)を介したβ-グルクロニダーゼ(GUS)レポーターの遺伝子誘導発現系を導入した組換え型シロイヌナズナとタバコ植物を作出した。組換え型AhRはマウス(m)、ヒト(h)、及びモルモット(g)の(AhR)について性能を比較した。組換え型AhRがAhRリガンドに応答して示したGUS活性を測定したところgAhRが最も高い活性を示した。そこで、組換え型gAhRを介した誘導GUS活性を示すシロイヌナズナ系統XgD2V11-6を用いて内在性オーキシンIAAを含むオーキシン様化合物のGUSアッセイを試みたところ、IAAはGUS活性を誘導することが判明した。また、合成オーキシンである除草剤2,4-DはIAAよりさらに高いGUS誘導活性を示した。なお、土壌汚染の重金属のうち、Cdの効果をアッセイしたところPCB126(TEF : 0.1)のGUS誘導活性を高くすることが判明した。一方、PCB126のアッセイに酵母培養で産生するバイオサーファクタントであるMEL-Bや牛血清のアルブミン(BSA、薬物キャリアー)を培地に添加したところ、MEL-BとBSAでPCB126のGUS活性が高くなることが判明した。MEL-BはPCB126とミセルを形成し、また、BSAはPCB126のキャリアーとなり、根における受動拡散による取込みや地上部への移行を容易にすると考えられる。
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