研究概要 |
残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants,POPs)は脂溶性が高く、環境で安定で、水系の底質に集積して、食物連鎖を介して生物濃縮されて、最上位のヒトを含む哺乳類に高濃度に蓄積する。とりわけ、体内の脂肪組織にたまり、母乳などを介して、乳児に移行する。 POPsのうち、ダイオキシン類、すなわち、ダイオキシン、ダイベンゾフランおよびコプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCBs)の環境汚染が広がっており、とりわけ、日本ではPCBの汚染が最も広範囲である。これまで、ダイオキシン類は高分解能ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)によって分析されてきた。高分解能GC/MSは感度・精度に優れているが、試料の前処理に時間が掛り、しかも、効率が悪く、経費が高い。 一方、哺乳類の体内にはアリルハイドロカーボン受容体(AhR)が存在して、それにある種のダイオキシン類同族体がリガンドとして特異的に結合して、CYPIA1遺伝子などを誘導発現する。それと共に、ダイオキシン類同族体のAhRへの結合親和性と毒性には相関性が認められる。そこで、ダイオキシン類に対する毒性の感受性の高いマウスやモルモットのAhR遺伝子を用いて、組換え型AhR遺伝子を構築して、それと共にレポーターであるβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を導入した組換え体植物タバコおよびシロイヌナズナを作出した。 組換え体植物をダイオキシンやPCB同族体の存在下で栽培して、植物体のGUS活性を測定することにより、毒性の高いダイオキシンやPCB同族体を測定することができた。また、バイオサーファクタントMEL-Bを用いることにより、感度が向上した。 なお、Co-PCBに選択的なモノクローナルおよび遺伝子組換え抗体を用いたCo-PCBsの免疫化学測定方法についても確立できた。
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