本研究では、きのこ廃培地の家畜飼料としての利用向上および乳用牛の大きな問題である乳房炎防除技術を確立することを目的にしている。本年度は、乳房炎抑制効果が高いとされる抗酸化作用(SOD)物質を焼酎粕培地および標準培地で栽培したシイタケ、エリンギ、ヤマブシタケ子実体で定量した。また、これらのきのこの中でSOD活性の高かったものについては、培養細胞を用いて、抗炎症作用も同時に調査した。その結果、シイタケ、エリンギについては、両培地ともにSOD値に差は見られなかったが、ヤマブシタケについては顕著な差が見られた。特に焼酎粕培地で栽培したヤマブシタケのSOD値は、標準培地のものと比較して5倍程度高かった。また抗炎症作用は、きのこ子実体で強く、廃培地で弱かったが、廃培地にも抗炎症成分が含まれていることが明らかになった。培地材料そのものには、抗炎症作用は認められなかったことから、きのこ菌糸により、抗炎症成分がつくられたものと考えられた。 その他の抗酸化酵素や作用についてもシイタケ、ヤマブシタケの子実体、培地を用いて測定した。カタラーゼ活性は両きのこの場合、子実体では認められるが廃培地には認められなかった。しかし、ヤマブシタケでは標準培地栽培のものが焼酎粕培地栽培のものより4-5倍高いのに対し、シイタケでは焼酎粕を含む培地で2倍の活性を示した。またグルタチオンペルオキシダーゼは子実体、廃培地ともに活性は認められるが弱く、これが他の培地や子実体で強いものが存在するかどうかさらに種菌、培地材料を変えて検討する必要がある。ラジカル消去活性はDPPHを用いて測定した。シイタケにおいては、培養中に培地の活性は著しく減少するが2次発生後の培地において著しい活性の上昇が認められ焼酎粕を含む培地が標準培地より高い活性を示した。
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