研究概要 |
我々はこれまでに実海水中でバクテリアや微細藻類から構成される微生物皮膜(バイオフィルム)の付着により電位が貴化した金属電極と、電位的に卑な金属電極とを組み合わせて電池とする微生物電池を検討してきた。このような微生物活性を利用する電池は、非酸化剤供給型ながらプロトン発生を伴うため、微生物燃料電池(Microbial Fuel Cell, MFC)と呼ばれている。これまでの研究から海水中で微細藻類などを主要構成物とする微生物皮膜の付着した耐食金属電極の微生物活性と二酸化チタン被覆金属電極の光触媒活性を組み合わせることで電位差1.2V程度のガルバニック電池を構築できることが分かっている。今回は、この反応を利用したゼロソース・ゼロエミッション型の海洋微生物燃料電池の構築を検討することを目的に、SUS329J4L鋼基材にTiO_2粉体をプラズマ溶射することで被覆したアノード電極を用いてバッテリーとしての発電特性を計測すると共に、電極表面の形態解析を行った。今年度得られた結果は以下の通りである。 1)TiO_2粉末中に不純物が含まれると皮膜表面に析出して周囲と局部電池を構成する結果、局部劣化が起こり光触媒効果を阻害することが分かった。 2)元素分析の結果から、1)の不純物のうちSi酸化物は局部劣化に影響を及ぼすがZr酸化物は大きな影響は及ぼさない。その理由としては、Zr酸化物が半導体的特性を示すことが関係していることも考えられる。 次年度は不純物量を減じたTiO_2粉末による溶射皮膜を検討するともに、アノード電極のインピーダンス特性を測定する。
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