研究概要 |
我々はこれまでに実海水中でバクテリアや微細藻類から構成される微生物皮膜(バイオフィルム)の付着により電位が貴化した金属電極と、電位的に卑な金属電極とを組み合わせて電池とする微生物電池を検討してきた。このような電池は微生物燃料電池(Microbial Fuel Cell, MFC)と呼ばれている。これまでの研究から海水中で微細藻類などを主要構成物とするバイオフィルムの付着した耐食金属電極の微生物代謝活性と二酸化チタン被覆金属電極の光触媒活性を組み合わせることで、電位差1.2V程度のガルバニック電池を構築できることが分かっている。今年度は、これら電池の電極特性を燃料電池評価システムを用いて計測した。その結果、本組み合わせで構築した電池の最大出力は、発生電圧3.0Vで1.59μW/cm^2となる事が分かった。また、対照として用いたAlアノード電池と比較して、TiO_2アノード電池の出力は電圧変化に対して出力ピークが小さく、特性がフラットであることが分かった。さらに,電池の繰り返し耐久試験を行い、完全放電を2回繰り返しても電池の電圧-電流特性に変化はなく、3回から7回までのサイクルで、徐々に発生電圧が低下する耐性を示すことが分かった。次年度は、参照電極に対応した交流特性評価装置を用いて、アノード、カソード両電極ごとにインピーダンス特性測定(EIS)を行うと共に、得られた周波数特性から等価回路を推定して電池出力のシミュレーション解析を行う。また、実海水流動環境中での電池の発電特性の計測と模擬筏を作製しての実海面上での出力特性の測定を行い、実機ライトブイへの適用について検討する。
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