研究概要 |
我々はこれまでに実海水中でバクテリアや微細藻類から構成される微生物皮膜(バイオフィルム)の付着により電位が貴化した金属電極と、電位的に卑な金属電極とを組み合わせて電池とする微生物電池を検討してきた。このような電池は微生物燃料電池(Microbial Fuel Cell, MFC)と呼ばれている。これまでの研究から海水中で微細藻類などを主要構成物とするバイオフィルムの付着した耐食金属電極の微生物代謝活性と、二酸化チタン被覆金属電極の光触媒活性を組み合わせることで、電位差1.2V程度のガルバニック電池を構築できることが分かっている。H22年度までに、これら電池の電極特性を燃料電池評価システムを用いて計測し、本組み合わせで構築した電池の最大出力は、発生電圧3.0Vで1.59μW/cm2となる事が分かった。また、対照として用いたAlアノード電池と比較して、TiO_2アノード電池の出力は電圧変化に対して出力ピークが小さく、特性がフラットであること、および。分極特性としてはAlアノードと同様にカソード支配型の分極特性を示しアノード電極特性の改善が電池出力に寄与することを確認した。また、出力向上のキーデバイスであるTiO_2アノード電極の性能向上と長期健全性について検討し、TiO_2パウダー中の純度の影響を調べた。その結果、99.9%純度の場合は電位が十分低下し、電子顕微鏡による表面元素分析ならびに表面反応測定装置による電位分布測定により、不純物として含まれるSiやZr等が酸化物として偏析し下地金属のアノード溶解が発生して電極電位の低下が抑制される電極劣化のメカニズムを解明した。一方、実海水流動環境中での電池構築の検討として、環境因子の影響について調べた。その結果、最も電池出力が高くなる温度および添加グルコース濃度が判明している。H23年度は、これらの結果を纏めて学会発表ならびに論文投稿を行った。
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